キミノカケラワタシノカケラ

少しずつ。前に進まなければならないのか?

神様の階段

日岡山に来ていた母と車に乗っていた時に。

 

 

 

あんた覚えちょるかねぇ?

神様の階段やがね、雲が。

 

 

 

ええ、母さん。

覚えているよ、お母さん。

そう言葉にするまでに時間がかかって。

母は笑っていた。

 

 

 

覚えちょるよ。大丈夫。

 

そう言う私を見て満足そうだった。

 

 

 

あなたが手を離すなと教えてくれて。

ずっと心の中心に。

子供を育てる自覚を持つまでそれをわたしが自覚するまで。

 

 

何度も何度も言い聞かせた。

 

 

 

つ。とつく年の間。

 

つ。と、年を数える時に。

 


一つから数えて九つまでは。
半分は神様からの預かり物じゃから。
自分の物と思って育てたらいかんよ。

あんた達だけの物と思って育てたらよ、
神様が怒って取り上げるかい。

絶対につ。と数える歳の時は。

手を離したらいかんとよ。

 


神様からの預かり物も。
頭に入れちょかんとよ。

 

 

 

口酸っぱく言われた。

 

 

 

 

伯父からは、神様の階段の話を聞いた。

雲間から落ちる光は神様の階段。

神話の国の宮崎で神主をする伯父。

 

 

 

なかなか帰ることができなくても

繋がっていると信じている。

 

母がいた間はとても気分が楽だった。

 

 

私が楽だったからと言って、母はそうではない。

岡山の地は馴染みがなく、慣れない家で少し暮らすくらいの一週間の滞在。

 

 

合間に仕事をしている私に。

 

 

 

あんた前より体が強くなったっちゃない?寝こまんくなったがね。

と、感心してくれたけど。

 

違うよ寝込みたくても寝込めんとよ。

と言う私に。

 

 

 

そんな歳やがね。頑張りなさい。

 

 

 

と、朗らかに。

 

 

 

 

 

 

超えてきた人は強い。

そして、超えようとする娘をただ見ている。

母はいつもそうだ。

口うるさくはなく、私のことを尊重しながらただ任せている。

 

 

その母が。

口を酸っぱくして言ったこと。

 

 

 

つ。と数える年の間は。

手を離してはいけない。

 

 

手を離さないと言うことは物理的なものの他に守りきらねばならないと言う心得。

 

10歳を過ぎた我が子たちにうるさく言わなくなった私を見て。

 

 

 

あんたはお母さんに似ちょるわ。

 

 

 

 

と、笑う。

 

 

 

 

 

最高の褒め言葉でした、お母さん。

 

 

 

 

 

 

岡山で見た神様の階段は。

 

また暫く私の支えになると思います。

 

 

 

 

 

今はもう無事に帰り着いて。

撮り溜めた正月特番を観ているらしい。

 

アナ雪は録画して焼いてあげた。

 

喜んでいたから私も笑った。

 

 

 

 

 

そんな当たり前が。

遠く離れて嫁に来た私にはなかなか出来ず。

帰りにいつも泣いてしまうのだけれど。

 

 

 

また会える約束をしたから。

 

 

 

 

 

それまで元気で。

 

 

 

 

 

 

また、神様の階段を一緒に見ようねお母さん。